2021年10月24日日曜日
『夢のアンデス』
2021年9月9日木曜日
アイダよ、何処へ?
ボスニア紛争末期に起こった集団虐殺事件の真実に迫った、ヤスミラ・ジュバニッチ監督の渾身作
Quo Vadis,Aida?
監督・脚本:ヤスミラ・ジュバニッチ
出演:ヤスナ・ジュリチッチ、イズディン・バイロヴィッチ、ボリス・レアー、ディノ・バイロヴィッチ
配給:アルバトロス・フィルム
上映時間:101分
公開:2021年9月17日(金)より Bunkamuraル・シネマ、ヒューマンとラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次ロードショー
HP:https://aida-movie.com
数年後のスレブレニッツァ。アイダはかつて暮らした家を再び取り戻すため訪れる。見つかっていない家族を探しに、掘り起こされた遺骨を確認しに出向く。そして教師という自分の仕事に戻り、さまざまな背景を持つ子どもたちと向き合う日々が始まる。緊迫感のある展開と変わって、その後の物語は淡々と語られていくのだが、このことがとても意味深い。
劇中、国連施設のゲート前で、一人のセルビア兵の若者がアイダを「先生」と呼ぶシーンがある。彼はかつての教え子で、息子の友人でもあった。ボスニア紛争では、同じ地に暮らす隣人同士が、銃口を向け合い、そして紛争後、人々は再び折り合って生きていくことになる。
本作で、ボシュニャク人のアイダを演じたヤスナ・ジュリチッチはセルビア出身。その逆の配役もある。そのことに意義があるかと問われ、ジュバニッチ監督は、同じ言語を話し、共通の歴史を持っている自分たちにとって、そして映画にとっても、国は重要でないはずとはコメントしている。
2021年9月6日月曜日
インディアンムービーウィーク2021 パート2
インド映画の話題作を紹介する「インディアンムービーウィーク2021」の第2弾が、6月のパート1に続き、この秋開催される。
2021年9月10(金)~10月7日(木)
場所:キネカ大森
(9月24日からは名古屋・大阪・兵庫など全国11カ所で開催)
配給:SPACE BOX
料金:1800円均一
【上映作品】
●『イングリッシュ・ミディアム』(原題:Angrezi Medium)
©Maddock Films, ©Skywalk Films
監督:ホーミー・アダジャーニア
出演:イルファーン・カーン、ラーディカー・マーダーン、ディーパク・ドーブリヤール
娘の留学を叶えようと奮闘する父を描く、ファミリーコメディー
ラージャスターン州ウダイプルで老舗菓子店を営むチャンパクは、早くに妻を亡くし、娘ターリカーを一人で育ててきた。ターリカーは、ロンドンの大学への留学奨学生に選ばれたが、父の迂闊な一言でチャンスを失ってしまう。志望校の留学生枠は埋まり、残るは英国市民向けの入学枠のみ。チャンパクはロンドンに住む旧友バブルーを頼り、ターリカー、いとこのゴーピーと共にロンドンに向かうが…。実力派俳優が勢揃いしたファミリーコメディ。昨年急逝したイルファン・カーン(めぐり逢わせのお弁当、ヒンディー・ミディアム)最後の出演作。
●『マスター 先生が来る!』 (原題:Master)
© B4U Motion Pictures, © Seven Screen Studio, © X.B. Film Creators
監督:ローケーシュ・カナガラージ
出演:ヴィジャイ(ビギル 勝利のホイッスル)、ヴィジャイ・セードゥパティ(キケンな誘拐)、マラヴィカー・モーハナン、アルジュン・ダース
公開初週の世界興収第1位! 荒廃した少年院の更生に立ち上がる正義の教師
アル中気味の大学教授のJDは、自身が主張した学生会長選挙で起きた暴動の責任をとり休職、地方都市の少年院に赴く。一方、バワーニは、少年時代にギャングの手で両親を殺され、その後少年院での生活で辛酸をなめ、冷酷非道な非合法ビジネスの大元締めに成長していた。バワーニが支配する荒廃した少年院で、JDは少年たちの更生のために立ち上がる。大人気俳優ヴィジャイと注目俳優ヴィジャイ・セードゥパティを主役に据えた、勧善懲悪のアクションドラマ。
●『ラジニムルガン』 (原題:Rajinimurugan)
© Thirupathi Brothers
監督:ポンラーム
出演:シヴァカールティケーヤン、キールティ・スレーシュ、ラージキラン、スーリ、サムドラカニ
極楽トンボのハッピー・マドゥライ生活
南インド、マドゥライに暮らすのんきな無職青年ラジニムルガンは、大きな屋敷に一人住む祖父に可愛がられていた。彼には幼少時からの婚約者カールティカがいたが、彼女の父親の心変わりで遠い町に送り出されていた。美しく成長し帰郷した彼女に、ラジニムルガンはあの手この手で彼女にアタックを試みる。祖父はそんな孫のために屋敷を売却しようとするが、そこに法定相続人を名乗る男が現れて…。人気俳優シヴァカールティケーヤンとキールティ・スレーシュ(伝説の女優 サーヴィトリ)によるカラフルなロマンチック・コメディ。
●『俺だって極道さ』 (原題:Naanum Rowdy Dhaan)
© Wunderbar Films
監督:ヴィグネーシュ・シヴァン
出演:ヴィジャイ・セードゥパティ(キケンな誘拐)、ナヤンターラ(ビギル 勝利のホイッスル)、パールティバン、ラーディカー・サラトクマール、
お洒落な街並みで巻き起こるスラップスティック復讐コメディ
ポンディシェリに住む青年パーンディは、警官の母親を持ちながら極道に憧れており、友達のドーシと一緒に「極道ごっこ」で小遣いを稼いでいた。ある夜、彼は聾唖の女性カーダンバリに出会い、一目惚れする。何とか彼女の心を開こうとするパンディだったが、彼女が求めたのは、幼少時のトラウマとなっている事件の首謀者である大物極道への仇討ちだった…。人気のヴィジャイ・セードゥパティとナヤンターラを配し、旧フランス領ポンディシェリのお洒落な街並みを舞台にした、異色の新感覚リベンジ・コメディ。ダヌシュ(無職の大卒)プロデュース作品。
●その他の「パート1」再上映作品はこちら
https://ryokojintabicine.blogspot.com/2021/06/2021-1.html
2021年8月16日月曜日
Summer of 85
フランソワ・オゾン監督が描く、少年たちの運命の出会いと永遠の別れ。
映画制作の原点となった小説の映画化。
Summer of 85
2020年/フランス
監督・脚本:フランソワ・オゾン
出演:フェリックス・ルフェーヴル、バンジャマン・ヴォワザン、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
配給:フラッグ、クロック・ワークス
上映時間:101分
公開:2021年8月20日(金)より 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国順次公開
●ストーリー
1985年の夏のフランス。セーリングを楽しもうとヨットで一人沖に出た16歳のアレックス(フェリックス・ルフェーブル)は、突然の嵐に見舞われ転覆してしまう。その時、彼に助けたのは、18歳のダヴィド(バンジャマン・ヴォワザン)だった。二人は急速に惹かれ合い、友情を超えてやがて恋愛感情で結ばれる。アレックスにとってはそれが初めての恋だった。互いに深く想い合う中、ダヴィドの提案で「どちらかが先に死んだら、残された方はその墓の上で踊る」という誓いを二人は立てる。
しかし、一人の女性の出現を機に、二人の気持ちはすれ違い始める。追い打ちをかけるように事故が起こり、ダヴィドは帰らぬ人となってしまう。悲しみと絶望に暮れ、生きる希望を失ったアレックスを突き動かしたのは、ダヴィドとあの夜に交わした誓いだった――。
●レヴュー
物語は、警察署のシーンから始まる。なぜあんなことをしたのかと問われる主人公のアレックス。その問いに、彼はダヴィドとの始終を語リ始める。ちょっと謎めいた始まりがいかにもフランソワ・オゾン監督らしい。
フランスのノルマンディーの海岸沿いに暮らすアレックスとダヴィド。二人の出会いは、ある夏の日。アレックスのヨットが転覆し、それを助けたのがダヴィドだった。文章を書くのが好きで少し奥手、進路に悩みを抱えていたアレックス。一方のダヴィドは奔放で能動的。だが父親を亡くしどことなく謎めいた少年。二人は急速に近づき、互いに惹かれていく。自分にないものを相手に求めていたのだろう。突然訪れた胸の高鳴り、溢れ出る愛おしさの感情、そこから始まる切なさと苦しさ、危うさに悶える若者の姿をフランソワ・オゾン監督は瑞々しく見事に描き出している。
監督が、10代の頃に読み影響を受けたというエイダン・チェンバーズの小説「おれの墓で踊れ」が原作。じっくりと35年の年月をかけてどう撮るかを練り、小説を読んだ当時の感情を重視して映像にしたという。作品は1985年の夏の出来事で、原題は「Ete 85(85年 夏)」。それは監督がこの小説を読んだ年とリンクしている。全編フィルムで撮影され、その質感は当時に撮影されたような雰囲気を醸し出す。衣装や、音楽からも当時の様子が伝わってくる。だが、不思議と年代を意識することはなく、物語に引き込まれる。しっかりとした物語の展開の中、二人の青年の心の機微を丁寧に追って描写しているからだろう。
その少年を演じた二人の若い俳優、フェリックス・ルフェーブル、バンジャマン・ヴォアザンが素晴らしく、また、二人の間に入り、重要な役所であるケイトを演じたフィリッピーヌ・ヴェルジュもフレッシュで魅力に溢れている。とりわけ、アレックスを演じたルフェーブルは、前半は、初恋に沸き立ちそして悶え苦しむ葛藤を、後半は恋と友情を失った失意の中、彼との約束を果たそうと苦しみ、やがて自身を見直していく姿を繊細に演じている。
原作を拠り所として純粋に仕立てられたこの作品は、観る人の心を揺さぶり、またかつて心が高鳴ったり感傷的になったりした頃の記憶を呼び起こすだろう。フランソワ・オゾン監督のそうした手腕は秀逸だと思う。(★★★☆加賀美まき)
2021年7月31日土曜日
アウシュヴィッツ・レポート
勇気ある脱走者のレポートが、12万人のユダヤ人の命を救った実話を映画化
監督:ペルテ・ベブヤク
脚本:ジョセフ・パシューテカ、トマーシュ・ボムビク、ペルテ・ベブヤク、
出演:ノエル・ツツォル、ぺテル・オンドレイテカ、ジョン・ハナー、ヤン・ネドバル
配給:STAR CHANNEL MOVIES
上映時間:94分
公開:2021年7月30日(金)より 新宿武蔵野館他全国順次公開
HP:https://auschwitz-report.com
1944年4月のアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所。遺体の記録係をしているスロバキア人のアルフレートとヴァルターは、毎日多くの人々が殺される収容所の惨状を目の当たりにしていた。彼らは、その残虐な行為の証拠を持ち出し、外部に訴えるため脱走を決行し材木置き場に身を隠す。二人がいないと気づいたドイツ兵は、同じ収容棟の囚人らを極寒の野外に立せて執拗に尋問を繰り返していた。数日後、機会をうかがっていた二人はやっとのことで収容所の外に脱出し、国境を目指して山林を歩き続ける。
アウシュビッツ=ビルケナウ収容所は、ポーランド南部の村に作られた強制収容所で、ユダヤ人をはじめ多くの人々が理不尽にも命を落していった。その犠牲者の数は110万人を超えると言われている。本作は、強制収容所を命懸けで脱走した2人の若いスロバキア系ユダヤ人によって、強制収容所の実態が国際赤十字にもたらされ、初めて世に伝わったという実話に基づく作品である。今では歴史的真実であるホロコーストも、当時、事実を知る者たちによる命がけの行動がなければ、その実態は世に知らされることはなかった。
そして、収容所では、残された人々が過酷な状況に置かれていく。極寒の中、野外に何日も立たされ、手引きした者を割り出そうとするドイツ兵から執拗に尋問を受けていた。だが誰も口を割らない。ドイツ兵の苛立ちも極限に達していく。そうした迫感感が見事に演出されて胸をつかれる。とりわけ凍てつく夜間、立ち続ける人々の姿が薄暗いライトに照らされるシーンは収容所の凄絶さが伝わってくる。
後半、二人はレポートを書き上げるが、そのレポートがどう伝わり、どう効力を発揮したのかは詳しくは語られていない。ハンガリー政府はユダヤ人の移送を断念し、10万人を超える命が救われたとされるが、その後も多くの人が強制収容所に送られ、犠牲者を出し続けた。
今日に至るまでホロコーストの悲劇を描いた作品が数多く発表されている。こうした映画の意味は、単にナチスが行なった蛮行を語り継ぐということだけではないだろう。映画の冒頭でジョージ・サンタヤーナの言葉「過去を忘れる者は、同じ過ちを繰り返す」が引用されている。そしてエンドロールでは、過去から学ぶことなく発言された「現代の声」がコラージュされて流される。非人道的な犯罪や行為、差別は、今なお世界各地で繰り返されている。最も大事なのは、きちんと過去を知り、そこからしっかり学ぶことだろう。それは、国際社会の一員として生きる日本も同じだとこの作品は教えてくれる。(★★★☆加賀美まき)
2021年7月20日火曜日
親愛なる君へ
同性パートナーの遺児と母親の面倒をみるピアノ教師。
彼が犯した罪と贖罪をミステリー仕立てで描く。
2021年7月10日土曜日
1秒先の彼女
アラサー女子が目覚めたらバレンタインデートの日がスキップされていた。「時差」が生んだファンタジーコメディ。『熱帯魚』などのチェン・ユーシュン監督の久々の日本公開作。
消失的情人節 My Missing Valentine
2020年/台湾
監督:チェン・ユーシュン
配給:ビターズ・エンド
上映時間:119分
公開:2021年6月25日(土)より
公式HP:https://bitters.co.jp/ichi-kano/
●ストーリー
郵便局で働く30歳のシャオチーは、幼い頃から何事も人よりワンテンポ早い。目覚ましより常に早く起きるし、目を開けた写真もない。ある日、シャオチーはハンサムなダンス講師と出会い、七夕のカップルイベントに出演する約束をする。しかし彼女が目覚めると、すでに七夕の翌日になっているばかりか、身体には覚えのない日焼けのあとが。シャオチーは失くした1日を探そうとするが、それには毎日窓口にやってくる変わり者の青年が関係していた。
●レビュー
90年代に『熱帯魚』『ラブ ゴーゴー』などの作品で注目された台湾のチェン・ユーシュン監督。
その後、長編映画から離れていた時期があり、久しぶりの日本公開作になる。
郵便局の窓口にいるシャオチーのもとに、切手を一枚ずつ買いに来る青年グアタイ。
映画の中盤までは彼は、ストーリーには絡まないモブキャラなのだが、
ちょうど映画の真ん中あたりで、突然主人公が彼に入れ替わる。
そこから今まで語られた物語が、今度は彼の視点で語られ直すのがポイントだ。
普通の恋愛ものだと思って見ていると、ここで本作は一気に謎解きものに進んでいく。
なぜ、グアタイは顔に怪我をしていたのか。なぜグアタイはなぜシャオチーのことを知っていたのか。
シャオチーの失踪した父親はどこへ行ったのか。
その仕掛けは、ミステリーというよりもファンタジー(ホラー?)的な理由なのだが、
「そういう考えもあるかもしれない」と新鮮だった。
人生長い目で見れば帳尻が合うようにできている。
そう思えば生きていて気が楽になるのではないか。それが本作のメッセージなのだろう。
現在のコンプライアンス的にはギリなシーンもあるが、
まあ、「もし自分がそのシチュエーションなら」と思う人もいるので、わざと入れたのだろう。
シャオチー役のリー・ペイユーがとても魅力的。
30歳という微妙な年頃だが、天真爛漫な少女にも図々しいオバサンのようにも見え、身近にもいそうな親近感のある魅力を生んでいる。
(★★★☆前原利行)




