予期せずにやってくる人生危機、
それを乗り越える「福」を見つける物語
監督・脚本:キム・チョヒ
出演:カン・マルグム、ユン・ヨジョン、キム・ヨンミン、ユン・スンア、ぺ・ユラム
配給:リアリーライクフィルムズ、キノ・キネマ
上映時間:96分
公開:2021年1月8日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
HP:https://www.reallylikefilms.com/chansil
映画プロデューサーのチャンシル(カン・マルグム)は、長年組んできた監督が、飲み会の席で突然亡くなり、これまでの生活が一変する。今まで恋愛もろくにせず、仕事に没頭してきた人生だったが、その大切な仕事がなくなり、今まで一体何をしてきたんだろうと、途方に暮れてしまう。
風変わりなおばあさん(ユン・ヨジョン)の家に間借りさせてもらいながら、食べていくために、後輩であり女優のソフィー(ユン・スンア)の家で家政婦として働くことになる。そこに現れたソフィーのフランス語の教師(ペ・ユラム)にチャンシルの心はときめく。そんな時にチャンシルの前に「レスリー・チャン」と名乗る謎の幽霊(キム・ヨンミン)が現れる。この怪しい幽霊のアドバイスを聞き、告白を試みるチャンシルだが…。
映画プロデューサーとして、信頼する監督と組み、ずっと仕事に没頭してきたチャンシルさん。だが、突然、人生がお先真っ暗な状態に陥ってしまう。仕事を失い、お金もなく、不便な坂の上の家に間借りすることに。気づけばろくに恋愛もしてない、恋人もいないアラフォー世代。頑張ってきた映画の仕事で評価を得られたわけでもなく、すっかり落ち込んでしまう。
そしてもう一つは、チャンシルさんを演じたカン・マルグムの魅力である。先に日本で公開された『悪の偶像』(イ・スジン監督)では、息子の罪の隠蔽を図る母親役を強かに演じて印象的だった。本作では一変、悩めるチャンシルさんをひょうひょうと、それでいてユーモラスで愛らしい演じっぷりが秀逸。遅咲きながら、これからどんな役柄をどう演じていくのか楽しみである。
また、チャンシルさんは個性的な人物たちに囲まれ、心を通わせていく。紆余曲折の人生を送ってきた大家のおばあさんを手助けしたり、ちょっと心ときめいた年下のフランス語教師とは映画談義をしたり。女優の後輩には不思議と慕われ、レスリー・チャンの亡霊には励ましの言葉をかけられる。そうした人物を名優ユン・ヨジョン、演技派のぺ・ユラム、キム・ヨンミンといった俳優たちが確りと演じている点も必見。