ブータン、秘境の村を舞台に、若い先生と子どもたちの交流を描く
出演:シェラップ・ドルジ、ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ、ケルドン・ハモ・グルン、ペム・ザム
配給:ドマ
上映時間:110分
公開:2021年4月3日(金)より 岩波ホール他にて全国順次公開
HP:https://bhutanclassroom.com
ブータンの首都ティンプーに暮らす若い教師のウゲン。歌手になりオーストラリアに行くことを夢見る彼は、夜遊び好きで教職には身が入らない。教師を辞めようと思っていた矢先、上司から呼び出され、僻地のルナナ村に赴任するように告げられる。
ブータンの面積は3.8万平方キロメートル、九州と同じくらいの広さに72万人が暮らしている。精神的な豊かさGNH(国民総幸福)が重要とされ、”国民総幸福の国”として知られている。独自の文化や伝統を守る暮らしの一方で、都市化やグローバル化も進んでいるようだ。本作は、都会の若者が訪れることになった僻地の村を舞台に、ブータンのそうした隔たり映し出し、本当の豊かさとは何かを問うている。
主人公のウゲンは、ティンプーに暮らす今時の若者。ミュージシャンになりたいという夢を果たすため、不向きな教師を辞めようとしていた矢先、世界一の僻地を言われるルナナ村への赴任を言い渡される。バスの終点、山奥の村からさらに1日程かかるのかと思いきや、とんでもなかった。ラバに荷物を運ばせ、6日間テント泊をしながら山道を進みようやく標高は4800メートルの村に到着。険しい山に囲まれ、ヤクが草を喰む雄大な風景が広がっている。電気もなく現代社会から隔絶された場所だが、新しい先生を待っていた子どもたちは、好奇心いっぱいに目を輝かせていた。「先生は未来に触れられる人」なのだ。
電気もなく、産業も乏しく冬は雪で閉ざされる辺境の村。ウゲンは、村人と交流しながら伝統的な生活に触れ、「ヤクに捧げる歌」を知り、次第に教師としての気持ちを子どもたちへと向かわせる。伝統や自然を遮断するようにヘッドフォンをしながら村へ向かったウゲンも少しずつ変化を見せていく。
ルナナ村は実在し、撮影も現地で行われた。9人の生徒たちは実際に村で暮らす子どもたちである。中心となる少女ペム・ザムはくっきりした瞳がとても印象的だ。物語と同様、実際のペム・ザムも祖母と貧しい暮らしをしているという。そうした厳しい村の現実と豊かで教育も行き届いている首都ティンプーとの格差。ブータンの知られざる部分が見えてくる。「幸せ」とは何なのだろうかと考えさせられる。