父の死をきっかけに異母姉妹が出会い、それぞれの人生に向き合い成長していく物語
花椒之味 / Fagara
プロデューサー:アン・ホイ、ジュリア・チュー
脚本・監督:ヘイワード・マック
出演:サミー・チェン(鄭秀文)、メーガン・ライ(賴雅妍)、リー・シャオフォン(李曉峰)、リッチー・レン(任賢齊)、ケニー・ビー(鍾鎮濤)、アンディ・ラウ(劉德華)
上映時間:118分
公開:2021年11月5日(金)より 新宿武蔵野館他全国順次公開
HP:https://fagara.musashino-k.jp
●ストーリー
疎遠になっていた、父(ケニー・ビー)が、突然倒れたと連絡を受ける。娘のユーシュー(如樹/サミー・チェン)は、会社から病院に駆けつけるが、もう亡くなった後で話すことも出来なかった。
残された父の携帯から、自分の名に似た知らない名前を見つける。葬儀の日、台北からプロのビリヤード選手でボーイッシュな次女ルージー(如枝/メーガン・ライ)、重慶からオレンジの髪色で表情豊かな三女ルーグオ(如果/リー・シャオフォン)が現れ、初めて3人の異母姉妹が顔を合わせる。
香港島タイハンにある、父が経営していた火鍋店「一家火鍋」の賃貸契約はまだ残っており、解約すれば違約金が発生する。従業員もいる。ユーシューは、父の店を引き継ぐことを決心する。しかし、火鍋のレシピは誰も知らず、常連客の望む“父の麻辣鍋”のスープが作れない。客足は少しずつ遠のく。ルージー、ルーグオも駆けつけ、姉妹はなんとか父秘伝の味を再現しようと奮闘するのだが。
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父と疎遠になっていた娘ユーシューは、突然の父の他界に当惑する。そして、父の携帯電話から自分と似た文字の名前を見つける。「パパ、元気?」「最近どうしてるの?」父と彼女らの親しげなやり取り。そこで初めて、存在の知らなかった二人の妹がいることを知る。父の葬儀で初めて顔を合わせた三姉妹。香港の長女ユーシュー、台湾で暮らす次女ルージー、重慶に住む末妹ルーグオ、暮らす場所も境遇も違う三人だったが、すぐに打ち解け合う。父の店を手放したくないと感じたユーシューは、契約満了まで、父の火鍋店を受け継ぐことを決心。妹たちも手伝いに加わり、店は賑わいを取り戻していく。そしてさまざま悩みを抱えていた三姉妹も自身を見つめ直し、成長していく。そんな姿が秀逸な脚本で小気味よく描かれている。
そして、もう一つの鍵となるのは、三姉妹が育った香港、重慶、台湾という三様の中国語圏の都市が登場するところだろう。火葬される父を送る時にかける三人の言葉はそれぞれ違っていた。火鍋の中で香辛料が混ざり合い、花椒が溶け込んでいるように、台湾そして、中国という巨大な国の中には、さまざま人々の日々の営みがあることを知らされる。本作は、香港は大きなうねりが起きる以前、2019年の作品である。(★★★☆加賀美まき)