アラサー女子が目覚めたらバレンタインデートの日がスキップされていた。「時差」が生んだファンタジーコメディ。『熱帯魚』などのチェン・ユーシュン監督の久々の日本公開作。
消失的情人節 My Missing Valentine
2020年/台湾
監督:チェン・ユーシュン
配給:ビターズ・エンド
上映時間:119分
公開:2021年6月25日(土)より
公式HP:https://bitters.co.jp/ichi-kano/
●ストーリー
郵便局で働く30歳のシャオチーは、幼い頃から何事も人よりワンテンポ早い。目覚ましより常に早く起きるし、目を開けた写真もない。ある日、シャオチーはハンサムなダンス講師と出会い、七夕のカップルイベントに出演する約束をする。しかし彼女が目覚めると、すでに七夕の翌日になっているばかりか、身体には覚えのない日焼けのあとが。シャオチーは失くした1日を探そうとするが、それには毎日窓口にやってくる変わり者の青年が関係していた。
●レビュー
90年代に『熱帯魚』『ラブ ゴーゴー』などの作品で注目された台湾のチェン・ユーシュン監督。
その後、長編映画から離れていた時期があり、久しぶりの日本公開作になる。
郵便局の窓口にいるシャオチーのもとに、切手を一枚ずつ買いに来る青年グアタイ。
映画の中盤までは彼は、ストーリーには絡まないモブキャラなのだが、
ちょうど映画の真ん中あたりで、突然主人公が彼に入れ替わる。
そこから今まで語られた物語が、今度は彼の視点で語られ直すのがポイントだ。
普通の恋愛ものだと思って見ていると、ここで本作は一気に謎解きものに進んでいく。
なぜ、グアタイは顔に怪我をしていたのか。なぜグアタイはなぜシャオチーのことを知っていたのか。
シャオチーの失踪した父親はどこへ行ったのか。
その仕掛けは、ミステリーというよりもファンタジー(ホラー?)的な理由なのだが、
「そういう考えもあるかもしれない」と新鮮だった。
人生長い目で見れば帳尻が合うようにできている。
そう思えば生きていて気が楽になるのではないか。それが本作のメッセージなのだろう。
現在のコンプライアンス的にはギリなシーンもあるが、
まあ、「もし自分がそのシチュエーションなら」と思う人もいるので、わざと入れたのだろう。
シャオチー役のリー・ペイユーがとても魅力的。
30歳という微妙な年頃だが、天真爛漫な少女にも図々しいオバサンのようにも見え、身近にもいそうな親近感のある魅力を生んでいる。
(★★★☆前原利行)