2021年7月10日土曜日

1秒先の彼女

アラサー女子が目覚めたらバレンタインデートの日がスキップされていた。「時差」が生んだファンタジーコメディ。『熱帯魚』などのチェン・ユーシュン監督の久々の日本公開作。

 



消失的情人節 My Missing Valentine   

2020年/台湾
監督:
チェン・ユーシュン

配給:ビターズ・エンド
上映時間:119分
公開:2021年6月25日(土)より

公式HPhttps://bitters.co.jp/ichi-kano/

 

ストーリー

郵便局で働く30歳のシャオチーは、幼い頃から何事も人よりワンテンポ早い。目覚ましより常に早く起きるし、目を開けた写真もない。ある日、シャオチーはハンサムなダンス講師と出会い、七夕のカップルイベントに出演する約束をする。しかし彼女が目覚めると、すでに七夕の翌日になっているばかりか、身体には覚えのない日焼けのあとが。シャオチーは失くした1日を探そうとするが、それには毎日窓口にやってくる変わり者の青年が関係していた。

 

 

レビュー

90年代に『熱帯魚』『ラブ ゴーゴー』などの作品で注目された台湾のチェン・ユーシュン監督。

その後、長編映画から離れていた時期があり、久しぶりの日本公開作になる。

 

郵便局の窓口にいるシャオチーのもとに、切手を一枚ずつ買いに来る青年グアタイ。

映画の中盤までは彼は、ストーリーには絡まないモブキャラなのだが、

ちょうど映画の真ん中あたりで、突然主人公が彼に入れ替わる。

そこから今まで語られた物語が、今度は彼の視点で語られ直すのがポイントだ。

 

普通の恋愛ものだと思って見ていると、ここで本作は一気に謎解きものに進んでいく。

なぜ、グアタイは顔に怪我をしていたのか。なぜグアタイはなぜシャオチーのことを知っていたのか。

シャオチーの失踪した父親はどこへ行ったのか。

 

その仕掛けは、ミステリーというよりもファンタジー(ホラー?)的な理由なのだが、

「そういう考えもあるかもしれない」と新鮮だった。 

人生長い目で見れば帳尻が合うようにできている。

そう思えば生きていて気が楽になるのではないか。それが本作のメッセージなのだろう。

 

現在のコンプライアンス的にはギリなシーンもあるが、

まあ、「もし自分がそのシチュエーションなら」と思う人もいるので、わざと入れたのだろう。

  

シャオチー役のリー・ペイユーがとても魅力的。 

30歳という微妙な年頃だが、天真爛漫な少女にも図々しいオバサンのようにも見え、身近にもいそうな親近感のある魅力を生んでいる。

 

(★★★☆前原利行)