2018年10月11日木曜日

アラン・デュカス 宮廷のレストラン

世界最高のシェフが世界を飛び回り、味を探求する


 
2017年/フランス
監督:ジル・ドゥ・メストル
出演:アラン・デュカス
配給:キノフィルムズ/木下グループ
公開:10月13日よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館にて公開
公式ページ:http://ducasse-movie.jp/

食通なら、アラン・デュカスの名を知らないものはいないだろう。
かくいう僕は食通ではないので、アラン・デュカスのレストランに行ったことはないのだが(笑)、その名ぐらいは知っている。
アラン・デュカスは、33歳のときに史上最年少で3星シェフに輝いた名シェフだが、本作からわかるのは、彼は単なる料理人ではなく、経営能力に優れていることだ。

デュカスは現在、パリ、モナコ、ロンドンに3星レストランを3軒運営するだけでなく、他にも2星、1星レストランを世界各地に運営している。
各店はその店のシェフに任せており、
今や自分で料理を実際に作ることはほとんどない。
とはいえ、自分の名前をただ冠しただけのフランチャイズではなく、また、各店舗の料理が全く関係ないわけでもない。
彼のマインドは、各店舗で生きているのだ。

本作はヴェルサイユ宮殿内のレストランのオープンをクライマックスに、世界を飛び回り味を探求するデュカスの多忙な2年を、
90分に凝縮したドキュメンタリーだ。
コンパクトにちょうどいい長さにまとめられており、
新書一冊読んだぐらいの充実度はあるだろう。
ロンドン、リオ、フィリピン、中国と世界各地へ味と食材を求めて飛び回り、また各店舗の新メニューをチェックして回るデュカスだが、日本のシーンも比較的長く収められている。

まずは東京の銀座のシャネルにある「ベージュ アラン・デュカス東京」で新メニューのチェック。
それから京都へ行き、老舗の日本料理店、大衆的な食堂、デパ地下のスイーツ店などをチェック。
彼が食べるのは、何も高級店ばかりではない。
数百円の安いケーキだって買ってホテルの部屋でチェックし、なぜこの価格でこのくらいのものができるかも気になるのだ。
その合間には、NHKの情報番組にだって出演する

パリへ戻ったデュカスは、新レストランのための「王の食卓」メニューの開発プロジェクトに取り組む。
ルイ16世時代をイメージした食器のデザインと発注、
現代でも揃う食材、そしてただ古いメニューの再現だけではなく、
そこに現代風のアレンジも施す
そしてオープニングの日。
政界ともパイプがあるデュカスなので、
来場客の中には各国大使が何十人もいる。
舞台裏ものが大好きな僕としては、
修羅場とそれに続く達成感を感じている顔を見るだけでも幸せだ。
そしてまた、自分もあのような達成感を味わいたいと、
羨ましくもなるのだ。

たまには贅沢して、デュカスのレストランへ行ってみようかと、
映画を見終わったときは思うのだが(笑)。
★★★☆