2015年11月2日月曜日

エベレスト3D


Everest




2014年/アメリカ
監督:バルタザール・コルマウクル(『ハードラッシュ』『2ガンズ』)
出演:ジェイソン・クラーク(『ターミネーター:新起動/ジェニシス』)、ジョシュ・ブローリン(『ノーカントリー』)、ジェイク・ギレンホール(『ブロークバック・マウンテン』)、サム・ワーシントン(『アバター』)、キーラ・ナイトレイ(『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ)、エミリー・ワトソン(『奇跡の海』)
配給:東宝東和
公開:116日より全国

●ストーリー


1996年の春、エベレスト登頂を目指し、登山会社を経営するロブ・ホールが8人の顧客を引き連れてやってきた。ベースキャンプには同じく、顧客を連れて登頂を目指すスコットのグループもいた。同じ日に登頂を目指すグループでの混雑が予想されることから、ロブとスコットは合同で山頂を目指すことにする。しかしトラブルが重なり、登頂時間が次第に遅れて行く。ロブは顧客のダグと共に山頂付近に取り残され、先に下山して行ったメンバーも途中で強烈なブリザードに襲われ、立ち往生してしまう。

●レヴュー


このエベレスト登山史上に残る大量遭難事件は、遭難者の中に日本人女性登山家がいたため、日本でもかなり大きく報道されたらしい。しかし僕自身はその当時長い海外旅行の途中で、この映画を見るまでそのことを知らなかった。なので結末がわからず、最後まで誰が生き残るかハラハラしながら見ることができた。遭難の経過についてはWikiなどに詳しいので、興味のある方はそちらを見てみるといいだろう。また、クラカワー、ベック・ウェザース、アナトリら遭難の当事者たちがその後に本を出版しているので、機会があればそれらの本を読んでみると面白いかもしれない。この遭難事件の関連本や映画は、別項にまとめたので、下の「関連情報」のリンクを参照のこと。

さて、誰もが知っているだろうが、この地球で最も高い地点、それがエベレストの山頂だ。その上に立つことを夢見て、多くの人々がこの山に挑んでいる。エベレストは比較的登りやすいと言われているが、それでも180人以上の人々の命を飲み込んでいる山なのだ。いくら万全を期しても、山の天候は誰にもわからない。人間は自分たちのスケジュールで山に登らざるを得ないが、自然はそんなことにおかまいなしである。映画の前半、天気のいい時は冒険ものに見えるエベレストの自然も、後半になるとただ、ただ、耐えるのみの辛いサバイバルものになる。もう人を助けるどころか、自分が生き残るのが精一杯だ。

映画を観ていて難しいなと思ったのは、「なるべく誰かを悪者にしない」ように描こうとしていること。リーダーの判断ミス、顧客のわがままや経験不足、などなど誰かの責任を追求しようとすると、必ず誰かが傷つく。現に生還者のクラカワーは優秀なジャーナリストだけに真偽はともかく筆力があるので、彼の書いた本は何人かの遺族を傷つけたという。そのためか映画では、誰かのミスでこうなったというより、そもそもエベレスト山頂は危険な場所なのだというスタンスをとっている。

そんな“気配り”があったせいか、本作の映像は見応えがあるが、各キャラクターの性格付けが弱く、それぞれに感情移入しにくくなっていることが残念。しかし映像は迫力あるので、その点は○。監督は『ハードラッシュ』など、手堅いがいまひとつピリリとこない作品が多いアイスランド出身の監督バルタザール・コルマウクル。寒さに強そうなのが買われたか(笑)(★★★)


●関連情報


・映画『エベレスト3D』に描かれた1996年の大量遭難。映画や書籍でこの事件を知るには。
・この遭難から生還したジャーナリストのクラカワーが、この事件をノンフィクション作品として書いたのが『空へ』。クラカワー作品では『荒野へ』が、『イントゥ・ザ・ワイルド』として映画化されている。