2015年10月7日水曜日

ヴィヴィアン・マイヤーを探して

謎の女流写真家、ヴィヴィアン・マイヤー
その発見と彼女の人生に迫るドキュメンタリー


Finding Vivian Maier

2013年/アメリカ
監督:ジョン・マルーフ、チャーリー・シスケル
出演:ヴィヴィアン・マイヤー、ジョン・マルーフ、ティム・ロス
配給:アルバトロス・フィルム
上映時間:83分
公開:10月10日(土)、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

●レビュー

 2007年、シカゴに住むジョン・マルーフはオークションで古いネガフィルムの入った箱を手にいれる。
「ヴィヴィアン・マイヤー」という女性が撮影したその写真をネット上に公開するや反響を呼び、賛辞が
寄せられた。しかし、彼女が何者なのかは謎のままだった。2年後、唯一検索エンジンにヒットした彼女
の死亡記事から、ヴィヴィアンが住み込みのナニー(乳母)だったことが明らかになる。

 ヴィヴィアン・マイヤーが撮った写真は15万枚。だが、生前に発表された写真は1枚もない。彼女は
一体どんな人物で、なぜ優れた写真を大量に撮り続けたのか。自ら監督を務めたジョン・マルーフは、
ヴィヴィアンが溜め込んでいた、呆れるほど膨大な数のシートやカード類、新聞記事のスクラップなど写
真素材以外も大量に収集。それらをひとつひとつ調べ、手がかりにしてヴィヴィアンの生い立ち、人物像、
そして彼女が残した写真の意義に迫るドキュメンタリーで興味深い。

 ヴィヴィアンの残した写真には、正直舌を巻いた。とりわけ、50年代以降、ローライフレックスを手に
した彼女が撮ったシカゴのストリートフォトは秀逸だ。ファインダーを上から覗くタイプのこのカメラで
は、被写体を少し下の方から狙うので、相手に緊張感を与えることなくシャッターを切ることができる。
ヴィヴィアンが捉えたシカゴの街に暮らす人の姿には、彼らの生活や生き様が感じられる。しかもごく自
然に一枚の写真として切り取られていて、一流の写真家と肩を並べてもおかしくない完成度。その後、彼
女の写真が高く評価されたのは当然のことだろう。世界各地の旅先で撮った写真も多く、本作の後半で紹
介されている。

 時折、ガラス窓や鏡に映って写真に写り込んでいる彼女は、証言通り、風変わりでちょっと偏屈な印象。
生涯独り身で孤独に生きたというのだが、本当のヴィヴィアンはどんな人物だったのか、見る人の想像は
膨らむと思う。(★★★☆)