2018年1月22日月曜日

はじめてのおもてなし




2016年/ドイツ

監督:サイモン・バーホーベン
出演:センタ・バーガー、ハイナー・ラウターバッハ、フロリアン・ダーヴィト・フィッツ
配給:セテラ・インターナショナル
公開:1月13日よりシネスイッチ銀座ほかにて公開中
公式サイト:http://www.cetera.co.jp/welcome/

●ストーリー
ミュンヘンに住むハートマン一家は裕福だが、家族がバラバラになりかけていた。教師だった妻のアンゲリカは定年後に生きがいを見出せず、医者の夫のリヒャルトは自分の歳を認めず仕事と若さにしがみついている。弁護士の長男はワーカホリックで妻に逃げられ、長女は31歳になるのに大学をまだ転々として将来を決められない。そんな中、アンゲリカは、アフリカ難民の青年ディアロを家族に迎え入れることにする。

●レビュー
難民問題で揺れる欧州だが、そのなかでも比較的、難民を受け入れてきたドイツ。
しかしそれにまつわるトラブルも増え、
きれいごとだけでなく、どう向き合うかの覚悟も必要になってくる。
当然ながら、ドイツの世論も二分される。
そんな中、2016年にドイツで公開され、大ヒットしたコメディだ。

本作がヒットしたのは、シリアスな題材にもなる話をアンサンブルコメディにして、堅苦しくないドラマにしたことだろう。
ズシンとくる話は見た後は確かにいいが、見に行くまで腰が重くなるからだ。
ただし本作はコメディだが、描かれていることはすべてまともに描いたらシリアスである。

ハートマン家の4人は、ドイツ人の縮図で老人問題、生きがい、働きすぎ、自分探しと、裕福だが、どこか人間的な幸せを見失って活力を失っている。
難民の青年から見ると、それが不思議で仕方がない。
また、難民に対する態度も、リベラル派でも分かれるし、さらにご近所に至っては、犯罪者扱いする者もいる。
そして何が何でも難民受け入れ派もおかしい。
そのすべてを均等に茶化し、最後は「人と人との関係が大事」というシンプルなところに落ち着くのだ。
難民問題という時事ネタがストーリーの軸だが、根っこでは「家族の再生」が大きなテーマになっている。
英米映画ばかり見ていると、俳優の演技がベタに感じるかもしれないが(ちょっと邦画っぽい)、きちんと伏線が張られた脚本は緻密。気楽に楽しもうという方にもオススメだ。

前原利行(★★★☆)