2017年1月27日金曜日

海は燃えている イタリア最南端の小さな島

イタリア最南端に位置するランペドゥーサ島。地中海を渡ってくる難民の玄関口になっているその島の現実と島民の生活を捉えたドキュメンタリー。

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FUOCOAMMARE

2016年/イタリア、フランス

監督:ジャンフランコ・ロージ
配給:ビターズ・エンド
上映時間:114分
公開:2017年2月11日(土)、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開

●ストーリー

 イタリア最南端の島、ランペドゥーサ島。12歳の少年サムエレは手作りのパチンコで友だちと遊び、漁師たちはいつものように海に出る。刺繍に励む老女がいて、地元ラジオDJが島民からのリクエスト曲を流す‥島の人々は平穏な毎日を生きている。
 しかし、この島にはもう一つの顔がある。アフリカや中東から命がけで地中海を渡る難民・移民たちの玄関口になっているのだ。島には巨大な無線施設があり、港には多くの救助艇が停泊している。ひとたび救難要請が出れば、海は無線が飛び交い、ヘリコプターが出動し緊迫した様相を見せる‥。 

●レヴュー

 イタリア最南端のランペドゥーサ島は、シチリア島から南西に220キロ、チュニジアの海岸からは113キロの位置にある。船が浮いて見える絶景で知られる美しい海に囲まれた、人口5500人の小さな島だが、そこは、年間5万人を超える難民が押し寄せてくる場所でもある。ジャンフランコ・ロージ監督は、実際にこの島に移り住み、TVやニュースの報道では見えてこない島の真の姿を伝えてくれる。

 難民が何万と押し寄せ、混乱する島、そんな連想していたにもかかわらず、映し出される島民の日常はごく平穏なものであることに驚かされる。世界でも大きく報道された、2013年の密航船の火災・転覆事故の後、難民は海上で救出されると古い港に上陸し、抑留センターに送られ、身分確認で振り分けられるようになる。難民は隔絶され、島民と交わることがなくなったのだ。島民の平らかな日々の暮らしは、無邪気な少年サムエルを通して映し出され、一方、隔絶された難民センターの内部、難民たちの姿や声から過酷な現状が伝わってくる。
 監督が映し出す島のふたつの世界。それは、平穏に暮らす人々のすぐそばに、普通の生活を送ることすらできない人々の現実があることを教えてくれている。そして、国の平和やありふれた日常を送れることがどれだけ尊いことなのか、私たちは想像することができるだろう。事情は異なるが、難民の受け入れを極端に少ない日本ではなおのことだ。

 そしてこの作品のもう一つの視点となるのが、島民と難民を繋ぐ唯一の人物で、島でたった一人のバルトロ医師。長年、島民の健康を診てきたと同時に、30年間、救助された移民・難民の上陸全てに立ち会い、検死の役割も担ってきた。難民問題は大きな国際問題なのだが、人道救護の現場は彼のような人々によって支えている。最後に映し出される救助の様子は壮絶で胸を突かれる。★★★☆)加賀美まき

第66回ベルリン国際映画祭 金熊症<グランプリ>

第89回アカデミー賞 外国語映画賞 イタリア代表