2016年9月2日金曜日

神聖なる一族 24人の娘たち


ロシア内にあるマリ・エル共和国に暮らす女性たち。彼女たちのおおらかな“生”と“性”を24のエピソードによって綴る





Celestial Wives of the Meadow Mari

2012年/ロシア



監督:アレクセイ・フェドルチェンコ

出演:ユーリア・アウグ、ヤーナ・エンポヴィッチ

配給:ノーム

公開:924日より渋谷シアターイメージフォーラムにて

公式HP24musume-movie.net


●ストーリー&レヴュー
ロシア西部のヴォルガ川流域に、古来の宗教や世界観が未だに残るマリ人が住む、
マリ・エル共和国がある。
キリスト教化、共産化したあとも、彼らの生活には自然崇拝的な古い習慣や風俗が残っているのだ。
本作はそこに暮らす女性たちによる、24のエピソードがつづられる。
エピソードにはすべて“O”から始まる女性の名前が付いており、
短いもので1分、長いもので10分、内容は女性と「性」にまつわるものが多い。
とはいえストーリーは現代の一コマのような現実的なものから民話的なもの、
オチがない不条理なもの、土俗的なものなど、多様だ。

理想的な夫を選ぶため、バケツいっぱいのキノコの形を調べる女性。
男の亡霊たちを呼び出し、裸で踊り出す女性たち。
夫の股間の匂いを嗅いで、浮気を確かめようとする女性。
貧弱な体の娘を布で拭いて、豊満な体にさせるまじないをする女性。
夫に思いを寄せる森の精霊に呪いをかけられ、
夫に股間を触られるとそこから鳥の鳴き声が聞こえてきてしまう女性…。
こう書くとエロチックを想像するだろうが、
実際には素朴な村の民話を聞いているような感じだ。
ただし民話なので、「オチ」がないものもたくさんある。
「え?どうなったの?」と思うと、もう画面は次のエピソードに移っている。
昔流行った、4コマの不条理マンガを、ずっと見ているような感じといえばわかるだろうか。

最初、僕はこの映画に出てくるマリ・エル共和国は、映画の中の架空の国だと思った。
で、調べてみたら、本当にあるので驚いた。
映画はそんな感じなので、ストーリーが面白いわけでも、感動があるわけでもない。
むしろ、狐につままれたような感じで見終わってしまう。
まあ、でもそれでいいのかもしれない。
きっとそれがこの国の魅力なのだ。
『愛おしき隣人』『散歩する惑星』などのスウェーデンの監督、
ロイ・アンダーソン監督作品が好きな人にオススメ。
★★★前原利行